あたりは深い闇につつまれ、パチパチパチと木炭をはじく焚き火の音が夜の奥底までこだましていました。ハニフとジェーンは熱いコーヒーを片手に琴乃とリハナは紅茶を片手に冬の星が瞬く夜空を見上げていました。時として馬車の音が近くの道を通り過ぎてゆくのが聞こえました。ハニフはギターを片手にバビロンの歌を隅からから隅まで一曲づつ夜の底まで歌いおろしてゆくのでした。「どうしてみんなあんなに急いでるのかな」「この場所では時計の針がゆっくりと回っているのに、あの場所の時計はとっても速く進んでる」それでも世界の時間はおんなじなのにどこかで時差が生まれてくるだろうこの時差をどうやって埋めていこうか近くの柿の木がしんしんしんと呼吸をつづける夜の中たわいもない話をずっと続ける夜でした。「どうしてみんなこの村に引っ越してきてこんな風にいきてゆかないのかな?」「みんなこの村に遊びに来るけど、また向こうの世界に戻っちゃうからいったり来たりとっても大変そうだね」「みんなそんなにお金が大事なのかな?そんなにたくさんのお金が必要なのかな?あっちの世界で急いで暮らすよりもこっちの方がいいのにね」「この村には学校も病院も八百屋さんも床屋さんもあるのにね」近くの椅子に腰掛け煙をくゆらすビーニー老人がふとつぶやいた「世界はまもなく枯渇してしまう、お前らじゃが何とかして、この世界を救ってやらねばならぬ、石油も原子力発電もオゾンの穴もツバル島の沈没も、バビロンが招いた地球危機に直面する一大事なのだ」どうしたらこの世界を救うことができるの?それはお前達が考えることじゃ、今わしの口から教えることはできん。ただ一つヒントを与えるとしたら、お前達自身もその飲んでいるコーヒーもこの焚き火もいまここにある世界の一つであることをしっかりと覚えておくんじゃ、ハニフとジェーン、琴乃とリハナがいま心の中で考えていることも今在る世界のカタチなんじゃ。この村はいまの地球にとってとても貴重で大切な存在であることには違いない。この村を中心に新しい世界を築いてゆけばよいのじゃ。そのために今のお前達に何ができるのかは自分らでしっかりと考えてみなさい」それを告げるとその老人は椅子の上から姿を消してしまったのでした。そしてハニフはまたギターを手に取り、バビロンの歌の続きを始めるのでした。そーだね今私達ができることって何だろう?「絵を描くことかな?ニワトリの世話をすることかな?野菜をたくさん作ることかな?それとも物語を書くことかな?ハニフみたいに歌を歌うことかな?」時計の針はあいも変わらずゆっくりと回る寒くて暖まる冬の夜でした。
町にでかけて
次の日の朝、4人は町に出かけ歌を道の上で歌うことにしました。道行く人たちは、足早にほとんどの人たちが4人の前を通り過ぎてゆきました。でも中には立ち止まってその普段耳にしないような音楽を深々と聞いてくれる人たちもいました。一人二人とその人たちは増えていき、30分もたたないうちに100人の人たちが回りに集まって来ました。そしてみんな普段耳にしないような音楽にあわせ体を揺らしていました。それはまさに私達の村の音楽であって村の時間そのものでした。みんな今が何時なのか忘れてしまって、その音楽にとても夢中になっていました。そしてあわてて我に返り会社に向かうサラリーマンやお店に戻る店員さんも中にはいました。私達は村から持って来たテープをみんなにあげました。そしたらお返しにと私達にお金をくれました。そのまま私達は日が暮れてしまう前に、みんなにさよならを言うと村のほうに歩いて帰りました。その夜はまた同じ焚き火を囲んで、今日の出来事の話でもちきりでした。みんな私達のテープを渡せた上に、お金まで頂いてとても幸せな気分になりました。「昨日のおじいさんが言ってたのはこうゆうことじゃないのかな?」「テープの中にはこの村の時間が流れているんだし、僕たちは町にでかけてみんなでいっしょにその村の時間を共有できたんだし」「よし、今度はまた違う村の物を持って行こう。もし誰かがそれを買ってくれたり喜んで受け取ってくれるのなら僕たちにとってもそれはとてもいいことじゃないか」私達は何か手がかりを見つけた気分で、とても良い気分でそれを味わいながら昨日と同じオリオンの星を眺め続けました。
村の暮らし
どんよりとした朝がゆっくりとここに来て、4人は目覚めました。今日はまた次につ町に行くときにもってゆく物をみんなそれぞれ作ろうそれはこの村からの贈り物であってプレゼントなんだみんな自分が思うこの村の贈り物を持ってゆこう琴乃はニワトリの小屋に入って行きましたリハナは絵の具と紙を持って川に出かけて行きました。ジェーンは畑に裸足で駆け出して行きましたハニフはギターを持って自分の小屋に戻って行きました。夕方、日が落ちるころにはみんなまた同じ場所に集まって来ました。琴乃は卵を持って、リハナは村の絵を持って、ジェーンは畑の野菜を持って、ハニフは新しいテープを持って、同じ場所に集まって来ました。「よし明日はこれを全部持って町にでかけよう。」夜が来ると、焚き火を囲んで明日のことをそれぞれが考えながらわくわくとしていました。そしてその夜は4人とも早く眠りました。
町にでかけて2
コケコッコー!!ニワトリの鳴き声と共に朝が来ました。みんな昨夜はぐっすりと眠ったみたいで、穏やかな顔をしていました。それぞれ身支度をすませると、さっそく昨日用意した村の贈り物を持って、町へと出発しました。2時間歩いてようやく町に着きました。今日も4人で道の上で村の歌をうたいました。そしてそれぞれが持って来た、卵と野菜と絵とテープもみんなに配りました。最初は少なかった人たちもまたどんどんと増えてまた30分もたたないうちに100人の人たちが集まって来ました。この前と同じ歌をうたうと、一緒に歌ってくれる人たちもいました。そして結局、村からのプレゼントはぜーんぷ来てくれた人たちに配りました。そしてまたお返しにとたくさんのお金ももらいました。今日はこの前来たときよりも、みんなとても喜んでくれて、また来て欲しいと言ってくれる人たちもいました。そうこうするうちにまた日が傾いてきたので4人で村に帰りました。夜になるとまた同じ焚き火を囲んでとてもみんな興奮して、今日起こった喜ばしいことについてずっと話続けました。そしてこれからもどんどん村のプレゼントを町に持って行こうとゆうことになりました。それから来る日も来る日も4人はそれぞれの村のプレゼントを用意して町に出かけてはたくさんの人たちから歓迎され、喜ばれました。ある日のこと朝が来て4人はいつものようにそれぞれのプレゼントを携えて町に向かいました。そして町に着いていつものように歌っていると一人の男の人がとても怒って私達の所へとやってきましたこの前私が買った時計はまともに動かないぞ、故障してるんじゃないのかい?ハニフがその時計を手に取り自分の時計と比べてみました大丈夫ですよ、ちゃんと上手に動いてますよ。するとその男は顔色を変えてもっと怒り出しました。この時計を見てみなよ、こっちは3時だけど、この前買った時計はまだ1時半じゃないか?
そしてさらに今度は女の人が怒ってやってきた。この前買ったテープをいつも聞いているんだけど、毎日会社に遅刻するし、朝起きれなくなるしいったいどんなテープを作ってるのよ!そうですよ、今はまだ一時半ですよ。
4人はその時とんでもないことに気づいた。この世界と私達の村の時計は全然違う速さで進んでるんだ。あの卵を食べた人たちも、あの野菜を食べた人たちも食べたときから、ゆっくりの時間が流れ出しちゃうんだ。
あたりは4人からもらったプレゼントのお陰でとんでもないことになったと怒った人たちの大騒ぎとなってしまいました
わたしたちは、みんなに謝って、そのまま村へと帰りました。
村へと一人の男がやってくる
今、町の世界ではとても大騒ぎになっています。あなた達がもってきた村の物を手にした人たちがもう町では暮らせないといいだしているのです。もうこれ以上、町に来るのはやめてください。私は本当はこんなこと言いたくはないんですが、もう町の人達に迷惑をかけるのはやめてください!」と言いました。ふとその時男の顔の表情がふわりと穏やかになると同時にさっきまでの形相とは打って変わったのです。「私ももう、町には帰れないようです。」「この村の空気を吸ってしまったので、わたしの時計も時間が変わってしまいました。」そのとき琴乃がつぶやいた。「じゃあ、今日からここで一緒に暮らしましょう。」残りの3人も「そうだよ、ここで一緒に暮そーよ」男は急に涙を流しました。「本当は私はここの村に昔から暮らしたかったのです。この村の話はずっと町の中で聞いていました。みんなはおかしな村と言って、あの村にゆけば頭も体もおかしくなると行ってだれもあの橋を渡ろうとはしませんでした。でも本当はこの村で暮らしたかったのです。あの町で政治家になりお金も稼げていろんな物もたくさん手に入るでも人生における充実感や満足感はまるでみたされはしませんでした。だから私は今日私はこの村にやって来たのです。政治家としてこの村にクレームを伝えるためにやってきたのですが、それは単なる都合の良いここにくるための口実だったのですあの橋を渡ってここに来ればどうなることかは私は実は承知しておりましたしかしあの町でそのようなことを口にすることはできませんでした。もしよろしければ私だけじゃなく私の家族もここに招いてこの村に暮らしたいのですがそうゆうわけにはいかないでしょうか?」
4人は笑いながら言った「もちろんだよ。お嫁さんも子供もみんな連れてきなよ♪」男はまた涙を流しながら言った。「ありがとうございます。その代わりというわけじゃないですが町で起こっている騒ぎは私が静めます、私の知人がイギリスのグリニッジで働いておりますので、世界の標準時間と速度を変えてもらうようにお願いしようと思います」
本当に町のこと社会のことを考えるとあくせく働きすぎている人々に潤いを与え、より良い街づくりをするためにはこの村のように、村の速度で生きてゆくことが良いことであるとゆことは百も承知でした。しかしそのようなことを私が口にしようものなら私はあの町で殺されていたでしょう。それに一度、町の中で村の時間が流れ出せば、それを止めることも調整することもでないのです。」
4人はあっけにとられた顔でお互いの顔を見合わせながら心の底から笑いあいました。次の日、その男は家族を連れて橋を渡ってこの村にやってきました。誰も住んでいない少し古い空き家があったのでしばらくはそこに住むこととなりました。
そして次の日男はイギリスに向けて船に乗って旅立ちました。その間、町の中で生きて行けなくなった村の時間が流れる人たちが次々と橋を渡って村にやってきました。そして真っ青とした顔が橋をくだると血色をとりもどしほころんでいく様子がわかりました。話を聞くとみんな昔からこの村に住みたくても住めない人たちで4人が待ちにいった時には心から歓迎してくれていた人たちでした。
みんな口々に町では大変な騒動となっていると語っていました。私達は、誰と話すこともできず、話した相手もみんなこの村時間が流れてしまうので一日中家の中にいることしかできなかったと」テレビもラジオも新聞もその村時間の流れを必死に止めようとしているけれどその止め方は今のところ見つかっていないそうでした。夜には焚き火を囲んで新しく村にやってきた人たちとお酒やコーヒーを交わしていました。するとこの前椅子の上に消えたはずの老人が姿を現して、つぶやきました。「お前達、よくやった。一刻も早くあの政治家がグリニッジに到着するとよいが」次の日も、次の日も橋を渡って町からたくさんの人たちがやってきました。もう村の空き小屋も少なくなり、食べ物もすくなくなってきました。みんなお腹をすかせて、畑の大根が育つのを待ち侘びていました。琴乃もお腹をすかせて、なかなか寝付けない様子でした、ハニフはあいも変わらず、バビロンの歌をうたい続けていました。すると空に雷がひかり、急に辺りが嵐に包まれました。近くの山がゆらゆらゆれて、地面がぐらぐらと揺れ動きました。急に朝になったり、夜になったり、太陽がギラギラ照りつけ、雨がザーザー降ってそれを2,30回くりかえしてやっと辺りが静けさを取り戻しました。
川をまたぐ橋が崩れてなくなっていました。
みんなが同時に叫びました。そして歓喜の声に包まれました。みんな泣いて喜びました。ニワトリもゴキブリもムカデもトンボもウキウキ浮かれている様でした。4人も心の底から喜びました。
そして世界はゆっくりとした村の時間が流れ出し心から満たされた暮らしを始めました。
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